2014年3月22日土曜日

フォトグラファーの視点:光と瞬 vol.14 ~気鋭の写真表現者たち~


東京・茅場町で開催されていた写真展に行ってきました。
タイトルは、「Art photograph group show フォトグラファーの視点:光と瞬  vol.14 ~気鋭の写真表現者たち~」。
http://www.recto.co.jp/verso/ap-g14/





 
4人の写真家による合同展です。
いつも仕事で撮影をしていただいている建築写真家の佐藤振一さんが出展されていたので、ぜひ見たくて、最終日になんとか訪れることができました。
http://www.satoshinichi.com
 
4人の出展者それぞれが、写真作品5枚ずつを展示していました。
佐藤さんの作品は、これまで十数年の間に撮影した作品の中からセレクトしたもの。ただし、5枚とも、撮影時期はちょうど今の時期、つまり冬から春に移り変わる季節だそうです。テーマは、「in the Late Winter」。
作品は、佐藤さんらしい、非常に高精彩のクリアな写真です。もっと大きなサイズで見てみたいなあと思いました。
今回の作品からは、とても静かな印象を受けました。以前に佐藤さんが撮影された街角のキオスクやサンフランシスコの街並みの写真を見たことがあります。それらの写真は、自動車のクラクションや雑踏の音が聞こえてきそうな、人間の活動のエネルギーを感じさせる写真でした。しかし、今回の5枚は、とても静かで人間の活動が生み出すざわめきをまったく感じさせません。おそらく日の出の時間帯に近い午前中のクリアな光の中で撮影しているからかもしれません。そもそも佐藤さんにとって初春という季節は、そのような静かな季節なのかもしれません。
 
それにしても、佐藤さんの作品を見ていると、勉強になります。
僕は、趣味で時々写真を撮ります(あくまで素人の趣味というレベルなので、ここで自分の話を出すのは大変おこがましいのですが、そこはご容赦いただいて、、、)。
今日、佐藤さんの作品を見ていて、自分が撮影している時の思考の癖に気づきました。その癖とは、「なにか面白いオブジェクトはないか」と探してしまう、一種の思考パターンです。
オブジェクトというのは、例えば、食べ物、彫刻、人物、建物、動物などなど。なんでもいい。いわば、オブジェとかモニュメントのようなものです。そして、そのオブジェが面白ければ、面白い写真が出来上がる。無意識のうちに、そう考えていました。
いやいや、もちろんオブジェを撮ることを否定するわけではありません。工業製品を撮る広告写真、あるいはポートレートなど、オブジェを撮る撮影も重要な写真のジャンルですし、その光の環境づくりなどは、とても高いノウハウが必要です。
けれど、趣味の写真として、「オブジェを撮る」以外の撮影パターンにも取り組んでみてもよいのではないかと、今日、思いました。というか、気づきました。
では、「オブジェを撮る」以外の撮影パターンって、何でしょう。
あえて言うなら、「目の前に広がる環境全体を撮る」という感じです。そのためには、どのような思考をすればよいか考えてみました。簡単に書くと、こんな感じです。

1:目の前に広がる景色全体を、ぼんやり眺める。全体を二次元の1枚の絵として捉える。(建物、人、看板といった個々のモノを眺めないようにする)
2:その絵全体が、どのような図形(構図)になっているかを捉える。(例えが、絵の中央部が高架橋で斜めに仕切られていて、その上部には青空と雲が少しあり、下部には小さい単位のもの(建物かなにか)が密集している、とか)
3:その絵全体が、どのような光の配置になっているかを捉える。(例えば、周辺は暗く、中央だけが強烈に明るい、とか)


てな感じで、「図形の状態」と「光の配置」が素敵で、「これ、いいかも」と思ったら、撮影してみる。もしかすると、視力が悪い人は、あえて眼鏡を外してみると、上記の思考を実行しやすいかも。
 
と、ここまで書いて思ったのですが、こんな発想は、写真を趣味にしている人なら誰でもしているのでしょうか。今さら気づくなんて、遅すぎ??
しかも、佐藤さんの作品の話だったのに、話が逸れすぎました。すみません。。。
ということで、話を戻すと、佐藤さんは、僕たちが目の前の景色を眺める際の思考パターンとは異なる思考パターンによって景色を眺めているのかもしれない、と感じました。
  
ただし、「目の前に広がる環境全体を撮る」という思考パターンは、決して簡単に習得できるものではないように思います。四六時中、その思考パターンで世界を見続けることで、ようやくいつか体得できるのかもしれません。
  
せっかくなので、もう二つほど気づいたことを備忘録として書いておきます。
一つは、「執念」の重要性です。
佐藤さんの撮影秘話を聞くと、1枚の写真、あるいは、一瞬の決定的な状態(特に太陽光の状態)を得るために、大変な時間とエネルギーを注いでいることに驚かされます。
もう一つは、「選ぶ」という作業の重要性です。
佐藤さんは、膨大な枚数の作品の中から今回の5枚を選んだわけで、「選ぶ」という作業にも、大きな時間と思考を割いてるはずです。考えてみれば、撮影する際のアングルだって、「選ぶ」作業と言えそうです。三脚を立てられる位置は無限にあるのに、その1点を選んだ。写真家の作業は、選択の連続なのかもしれない、と改めて感じました。
  
  出展作家 : 佐藤 振一 / ケースケ・ウッティー / 富田 眞一 / 関根 ミキ
  会期:2014年3月4日(火)~ 3月8日(土)
  会場:RECTO VERSO GALLERY 
  東京都中央区日本橋茅場町2-17-13第2イノウエビル401
  http://www.recto.co.jp/verso/




ちなみに、会場となったイノウエビルという建物↑は、味わい深いビルでした。